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自殺した女子生徒のノートを手にする遺族代理人の石田達也弁護士=2024年3月8日、横浜市中区本町6丁目、堅島敢太郎撮影

 【神奈川】4年前、中学2年の女子生徒が「遺書」と書いたノートを残して命を絶った。遺族はいじめ被害を訴え、調査を求めたが、その結果が公表されたのは今年3月だった。この遺族の代理人を務め、各地のいじめ問題にも携わる石田達也弁護士は、現在の仕組みに「根本的なねじれがある」と指摘する。

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 ――遺族代理人を務め、横浜市教育委員会の対応はどう感じますか。

 「巨大自治体の中の巨大教育委員会で、とにかく意思決定に時間がかかる。子どもたちの命は一分一秒を争う重大な問題です。すべてにおいて時間がかかりすぎなことが、事態を悪化させているのではないでしょうか」

 「良心的な職員や先生はいます。でも、その良心が意思決定に結びついているでしょうか。今回はまず、学校が窓口になって、学校教育事務所、本庁といくつもの行政機関を通しました。そのたびに遺族の声は押しつぶされ、組織的な決定が優先されてしまいます」

 ――いじめが原因と認定する報告書が公表されるまで4年かかりました。

 「調査は1~2年で結論を出すケースが多く、ちょっと時間をかけ過ぎかなという印象です。4年かかったからダメだとはいいませんが、いじめ防止対策推進法には、子どもを徹底して守るため、『早期』という言葉が並びます」

 ――2年後に市立学校で同学年2人が相次いで自殺しています。再発防止策が取られていれば、2人の命も救えたかもしれません。

 「2年後であれば、何かしらの教訓は得られていたはずです。いじめが関係していようとなかろうと、自殺が起きたことは事実です。学校がゲートキーパーの役割を果たせていなかったことははっきりしていました。学校や市教委は自殺予防という観点でも動けたはずで、状況は異なり得たのではないでしょうか」

 ――過去10年間に起きた児童・生徒の自殺41件のうち、外部の専門家を加えた詳細調査まで実施したのは3件のみです。市教委は主な理由として「遺族の意向」をあげています。

 「我が子を失い、ほとんどの遺族は自責の念にかられます。そのようなとき、多くの場合が『今はそっとしておいて』とおっしゃいます。よくあるのが、その言葉を『調査は求めない』に置き換えてしまうパターンです。遺族の言葉尻を捉えていませんか」

 「そもそも学校や市教委は対立当事者になりかねません。我が子を守れず、いじめを見逃した人たちかもしれない。そんな不信を抱いている相手に調査を委ねることになります。ここに根本的なねじれがあると思います」

 「遺族から信頼されていないから、調査を求められない。市教委はそういう自覚がなく『遺族の意向』と繰り返しているのだと思います。自分たちが問題を起こした当事者だという意識をもってほしいです」

 ――市教委は詳細調査をしなかった38件の再調査を実施しています。県弁護士会も加わり、第三者的な視点が入りそうです。

 「最初からやっておくべきでした。時間が経てば記憶も衰退します。調査の実を挙げにくくなり、真相究明が阻まれてしまいます」

 「ただ、誰がいつから、どういう目的で、何を調査しているのかもわからず、評価のしようがありません」

 ――今後、市教委に求める対応は。

 「他の自治体の失敗事例を学んでほしいです。初動の調査から弁護士を入れている自治体もあります。失敗を経験した自治体の教訓が、その自治体限りになってしまうことが多くあります。今回も横浜だけの問題で終わらせず、きちんとシェアしてほしいです」(聞き手・良永うめか、堅島敢太郎)

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